トキ保護活動を写真集に

 トキの保護活動を60年以上続けてきたNPO法人「日本中国朱鷺とき保護協会」名誉会長の村本義雄さん(92)(羽咋市上中山町)が、写真集「中国のトキを慕いて」(橋本確文堂)を出版した。日本のトキ絶滅後、中国陝西省で発見されたトキを追って民間の外国人として初めて1993年に繁殖地を視察するなど訪中を20回余り重ねた日々や、トキとの共生を記した集大成だ。「トキを日中友好の懸け橋にしたい」という衰えない情熱が込められている。
 トキに関する書籍として7冊目となる今回の写真集は、縦17センチ、横18センチの変型判72ページ(税込み1620円)。「情熱は海を越えて」「遊蕩ゆうとう期のトキ」「中国との交流」「謎めいた鳥、トキ」の4章で構成され、陝西省洋県で撮影したトキが飛翔する美しい姿や、巣作りするつがいを含む繁殖期、遊蕩期の写真などを掲載している。

 江沢民ジアンズォーミン元総書記が98年に初来日した際、中国のトキが日本に贈られる舞台裏のエピソードなどをコラム5編に収めた。57年に羽咋市の眉丈山の池で見つけたトキのくちばしや骨格などを精密に描いたスケッチ画も収録されている。

 村本さんは、佐渡とき保護会(新潟)元会長の佐藤春雄さんらと共に国内のトキ保護活動を先導した第一世代。外国人の立ち入りが禁止されていた頃の洋県の繁殖地で、村人と田起こしや田植えを手伝いながら、トキの巣近くのテント内でじっと望遠レンズを構え、その生態を撮影した。餌不足のために巣の中で死んだヒナを見守る親鳥の姿を撮った一枚が特に印象に残るという。

 当初、洋県に約100羽しか生息していなかったトキは、現在、中国政府の保護・繁殖活動により17県の約2200羽にまで増えたという。「乱獲と農薬の影響で日本のトキは絶滅した」と指摘する村本さんは「トキ絶滅の危機を救ったのは中国の農民の努力。日中交流の発展につながるとともに、将来の研究資料としても役立つ写真集となり、天国のいい土産ができた」と話した。

 写真集は、トキが生息する新潟県佐渡市の小中学校全36校と、洋県の学校に寄贈された。