西安で発見された盛唐のお墓 石棺に精巧な壁画

陝西省考古研究院は2日、同院が2023年の考古学調査で発見した西安唐薛柔順石椁壁画墓は、身分の高い人を埋葬する長安地区の伝統的な埋葬地以外で発見された最も精巧で美しい盛唐時代のお墓の一つであり、同時代の身分の高い人の埋葬地の分布を研究する上で重要な意義があると明らかにしました。

墓室の西側で発見された石槨(ひつぎを覆う石造りの外棺)は壁板と傾いた柱から成っており、板壁の外側には門、窓、巻き雲、神獣が彫られています。本体の内側には主に侍女が描かれ、周囲には草花などが飾られています。柱の内と外はいずれも絡み合った枝や巻いた草が彫られており、一部には鳥や動物がちりばめられています。線は彫りが細かく、画面は華やかながら冗長ではなく、人物の体つきはふっくらしてはいるものの太ってはいません。盛唐の開元年代(713~741年)に見られる柔軟性のある図案、想像力に富んだ特徴を十分に体現しているとされています。

墓室の東側の壁は楽舞図で、北側の壁の西は玄武図、西側の壁は6組の草花です。南側の壁は朱雀で、翼を広げて飛び立とうとしています。壁画は充実したレイアウトと真に迫った画面から、墓主の生前の生活がある程度反映されており、墓主の優雅な趣が伺えます。
 墓誌から、墓主は薛柔順で、幼い頃に両親を相次いで亡くし、一度は出家したが、開元29年に男の子を出産後、急病で、わずか29歳で亡くなったことが分かります。
 今回出土したこの石棺は保存状態がよく、彫られている壁画の力強さと明快さは近年まれに見るものです。また壁画の内容は豊富であり、構図もコンパクトで合理的で、画面が生き生きとしており、盛唐時代の墓壁画を代表するものです。さらに、墓誌の内容が豊富で、河東薛氏の分家である薛儆と皇室との関係を研究する上で重要な意義があるとされています。(朱、坂下)