奈良・藤原京跡 唐三彩の陶器片見つかる 「枕」の一部か

奈良県橿原市教委は20日、同市四条町の藤原京跡から唐三彩を施した藤原宮期(694〜710年)の陶器の破片が見つかったと発表した。中国・唐代の陶器で、破片は陶器の「枕(ちん)」の一部とみられる。専門家は「遣唐使が日本に持ち帰ったものの可能性がある」と指摘する。


奈良県橿原市藤原京跡で出土した唐三彩の陶器の破片を基に、全体を復元した「枕(ちん)」のイメージ図=同市教委提供
 唐三彩は7世紀の古墳の副葬品や、奈良時代の遺構で見つかっている。藤原京跡での出土は2例目で、枕は初めて。

 三彩片は縦2.6センチ、横4.3センチ、厚さ0.5センチで、表面に白、緑、茶色の3色の釉(ゆう)がまだら状に施されている。市教委は昨年、市道拡幅工事に伴う調査で右京五条七坊で三彩片を見つけた。藤原宮期の西六坊大路や溝などを確認。瓦や須恵器も一緒に出土したが、明確な建物跡は見つかっていない。

 奈良県橿原考古学研究所の菅谷文則所長(考古学)は「洛陽に行き704年に帰国した遣唐使一行の誰かが持って帰ったのだろう。中国とのつながりが目に見える史料だ」と話す。

 唐三彩に詳しい奈良文化財研究所の神野恵・主任研究員(考古学)は釉薬の発色の特徴などから、三彩片の生産地を中国・洛陽の西約60キロの鞏義窯(きょうぎよう)とみる。また大阪市立東洋陶磁美術館出川哲朗館長(中国陶磁史)は「唐三彩の初期に作られた典型的な物だ」と話している。

 三彩片は21日〜9月17日、橿原市川西町の「歴史に憩う橿原市博物館」で開かれる夏季企画展で展示する。【藤原弘】