建設現場で何やら騒ぎ・・・地下から古銭がざっくざく、周辺住民も突入「それっ」=中国・陝西

陝西省宝鶏市のマンション附属施設の建設工事現場で28日、大量の古銭が出土した。工事現場の作業員が騒ぎ始めた。マンション住民らは、作業員が古銭を集めていると分かった途端に殺到。“身分の違い”を忘れて、皆で掘って持ち去った。事態を知った警察が回収に努力したが、多くは「人手に渡ったまま」という。華商報などが報じた。

 専門家が警察が回収した古銭を鑑定したところ、「新」の時代に鋳造されたものと分かった。「新」は前漢最後の皇帝の外戚の王莽が樹立した王朝で、西暦8年に発足したが同23年には反乱軍に攻め滅ぼされる。その後は結局、漢皇室の一族の劉秀が漢朝を復活させる形式で国を統一した(後漢)。同建築現場で出土した古銭は約2000年前のものであり、短命王朝の鋳造という面でも、きわめて貴重な文化財という。

 マンション敷地内では住人用の娯楽室の建設が進められていた。28日夕方、作業員が騒ぎ始めた。袋になにかを詰めている。あわてたように現場を離れる作業員もいた。住民のひとりが作業員に事情を聞いた。「古いゼニが出てきた」というので、見せてもらった。青緑色になった銅銭で、「大泉五十」などと、一部の文字が読み取れた。確かに古銭だ。住人らの顔色が変わった。

 「古銭が出た。しかも大量だ!」――。情報はたちどころに広がった。マンション建物の入り口から次々に人が出てきた。「出土場所」に群がった。日がとっぷりと暮れても、人々は地面を掘って古銭を集めつづけた。

 中国では、貧富の格差が問題になっている。都市のマンションに入居できる人は、中流階層かそれ以上と言ってよい。一方、建設作業員は貧しい人々だ。農村部から現金収入を求めて都会にやってきて、臨時労働者として働く人も多い。

 都市住民が工事作業員などに差別感を持つ場合があると問題視する声もある。差別感を持たないとしても、家事手伝いなどで雇ったりする場合を除き、都会出身の裕福な人と貧しい人、とくに地方から来て働く貧しい人との接点はほとんどない。

 28日の工事現場は違っていた。マンション住人も作業員も、全員が“身分の違い”に関係なく、同じ目的のために汗を流した。地面に這いつくばり、古銭を掘り出してはかき集めた。

 事態を知った警察が駆けつけたのは、午後10時過ぎだった。人々はまだいた。夢中で古銭を掘り集めていた。警察官が強制的にやめさせるまで続けていた。

 警察は最初に古銭を見つけた作業員の部屋から、古銭十数キログラムを回収した。同作業員によると、50センチも掘らないうちに、地中から大量の古銭が出てきたという。警察は引き続き、住民の部屋を検査するなどで計約40キログラム分を回収。しかし、まだかなり多くが「人手に渡った」状態とみられ、今後も調べを続ける考えだ。

 出土した古銭と現場を調べた鶏宝市の博物館関係者は、「古銭は4種類あり、刻まれている文字から『新』が鋳造し使用されたた貨幣と見られる」と説明。出土地点の周囲に墓はなく、埋蔵状況からして「庫のような性格の施設があった」と考えられるという。

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◆解説◆
 陝西省は、秦、漢、唐などの王朝の中心地であり、文化財出土の事例も極めて多い。同地では、秦の始皇帝項羽劉邦(漢高祖)、玄奘三蔵、唐玄宗楊貴妃など、日本人なら歴史ファンならずとも知っている歴史上の有名人物の多くが活躍した場所でもある。

 陝西省が古代中国の中心地であった背景にはシルクロード交易があったとされる。宋代(北宋:960−1127年)ごろから海上交易が盛んになると、中国全体を牽引(けんいん)する地域は、沿海部または海に近い東部地区に移っていった。(編集担当:如月隼人)