宝鶏(転載)

マイナー宝鶏
西安外国語大学  加藤 誠 先生
 
宝鶏は3区9県から成り、陝西省西安、咸陽に次ぐ大きな市だ。この辺りは周、秦の発祥地で、史跡も多い。
法門寺は、今でこそ立派に修復されて参拝客や観光客で賑わっているが、私が訪問した1986年は、「八重葎繁れる宿」のように寂れて廃寺同然だった。落雷によって縦半分になった塔が痛々しい姿を曝していた。地下に相当の文化財が埋蔵されていたことが判っていて、発掘の計画があるということだった。驚愕に値する文物が出土し、あれほど燦然と輝くように復元されるとは、当時思いもよらなかった。
宝鶏には、このほか、諸葛亮臨終の地である五丈原周王朝の基礎を固めた周公旦を祀った周公廟、太公望が釣り糸を垂れたとされる巨岩が残る釣魚台、蘇軾が鳳翔府判官の時に整備した東湖など見るべき史跡が多い。金台観は明代の道士張三豊が修道した道観だが老朽化が進んでいる。中でも、最近市街地から石鼓山公園に移転した青銅器博物館は圧巻だ。身分証があれば、無料で入場できるのが嬉しい。これらのメジャーなスポットはガイドブックにも載っているので、解説はそちらに譲る。
宝鶏市区の南5、6キロの常羊山に炎帝陵がある。炎帝は神農と習合して炎帝神農氏と呼ばれ、黄帝とともに漢民族の祖と仰がれる。伝説によると、蒙峪に生まれ、九竜泉で産湯を使い、姜水の畔で長じ、天台山で薬草を採取したそうだ。五千年余り前、一族はこの地に栄えたという。陵は前区・祭祀区・墓塚区から成り、この日は雨で参拝者も疎らで、粉糠雨に濡れた無数の幟が厳粛な佇まいを縁取っていた。清明節には全山に香煙が漂い、漢民族の子孫たちで賑わうという。入場料30元、別料金でガイド(中国語)を頼むこともできる。
宝鶏駅から北東4キロほどの所に、北坡公園がある。この公園は高台になっていて、その頂上に、大唐秦王陵がある。唐末、秦王に封ぜられた李茂貞とその夫人の合葬墓だ。中国で唯一発掘された唐代の王侯の地下合葬陵墓だという。山門から神道、献殿、祀殿を経て地下の陵墓に入る。羨道の両側には楽伎の図や八人舁きの駕籠などの線刻画が施され、三彩の陶俑なども陪葬されている。陵墓のほか、敷地には、北斗七星の位置を示す地面天象図が煉瓦で作られていたが、残念ながら私は天文の知識に欠けるので、どれが北斗七星か分からなかった。ここは入場料35元。
中国の寺院や道観にはよく占い師がいるが、注意を要する。大唐秦王陵も例外ではない。サービスすると言って占いを始めると、途中で身の丈ほどもある一番大きな線香を供えて、その線香代99元を請求された人がいた。青島の太清宮でも、値段を聞かずに占ってもらった人がいて、600元請求された人もいた。(両方とも私ではありません。念のため。)