中国 司馬遷の故郷 陝西省韓城市 転送

■麻婆豆腐に欠かせない山椒の集散地

 西安から北東へ200キロ、山西省との境近くに陝西省韓城市がある。ここにいくと、中国第2の河川・黄河中流域に広がる黄土高原の文化・歴史や生活ぶりを垣間見ることができる。「史記」を書いた司馬遷の出身地としても知られている。

黄河を遠望する陝西省の韓城にある司馬遷祠墓
◆黄土高原の恵み

 西安から車で標高数百メートルの黄土高原を裾野から駆け上り、谷に架かる橋のたもとで小憩して、眼下の渓谷をのぞき込む。黄土高原を切り刻んだ険しい渓谷は、さながらミニ・グランドキャニオンの絶景である。谷間には横穴住居の窰洞(ヤオトン)があちこちに散在している。

 韓城市は、本場四川料理の麻婆豆腐で欠かせない、あの舌先のしびれる山椒の集散地である。夏場であれば黄土高原が緑でおおわれ、茶摘みならぬ山椒摘みの光景を車窓からのぞむことができる。


 ある夕食会のとき、地元の代表が日本からの円借款に感謝の言葉を述べたのをはじめて耳にした。「地元名産の“大紅袍山椒”がここまで生産を拡大でき、本場四川料理の市場に大量に販売できるようになったのは、円借款で灌漑(かんがい)施設を構築できたから」と言うのである。

 街中では夜遅くまで商談に応じる人たちであふれていた。ある調査報告では、“大紅袍山椒”の年産は1万6000トンで全国の6分の1のシェアを占めている。年間生産額は約3億元、農民収入の40%を占めているのだそうだ。

 韓城にある党家村には、約660年前に建てられた民家・四合院が百数十軒も残っている。この村は、昔から行商を生業としてきた。行商人たちは蓄えた資金を元手に独特の民家集落をつくり上げ、たびかさなる戦火からも免れて、今の姿を残した。

 中国でも数少なくなってきている四合院住宅の保存活用には、日本の専門家のアイデアも生かされているという。